デスティネーション・ストア | File 052:Friend in Hand(東京都・表参道)
2024.10.10

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 052:Friend in Hand(東京都・表参道)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 052は表参道に位置するビルの9階で、看板も出さず静かにオープンしたカフェ・バーの「Friend in Hand」。

Text Takaaki Miyake

目印は手書きのストアサイン

本企画でこれまで登場することのなかった表参道エリアだが、そんな都内でも屈指の好立地にありながら“まさしくデスティネーション・ストア”と言いたくなる場所が2024年7月にオープンした。

今回の「Friend in Hand」は表参道駅から徒歩2分のビルの最上階、9階に入るも看板に頼ることなく営業するカフェ・バー。同居するヘアサロンや美容クリニックとは奇妙な不調和を醸し出し、マップを見ながら目指しても少し戸惑ってしまいそうだ。やっと到着するも唯一の手がかりはフロアマップに貼られたマスキングテープに書かれたシンプルな店名のみ。

しかし一度エレベーターで9階まで昇れば、そんな不安も一瞬で忘れてしまう海外のパブを想起させるような店内が目の前に広がる。スケルトンの状態から印象的なカウンターやインテリア、細部にまでこだわり作り上げた「Friend in Hand」で店舗マネージャーを務めるのが、これまで都内を中心に飲食店における立ち上げやメニューの監修、空間演出や店内BGMのキュレーションなどを手がけてきた荻原将司さんだ。

都心に佇むルーフトップ

店内ではバリスタからバーテンダーとしてまで手腕を発揮する荻原さんは、「Friend in Hand」のオープン数ヶ月前まではオーストラリアの飲食店に身を置いていた。

「日本ではある程度の経験を積むことができていたので、30歳になったら自分のお店をやろうと決めていたんです。ところがワーキングホリデーがまだ使える年齢なのに気が付いて、それだったらコーヒー文化も盛んなオーストラリアに行ってみようと。元々一度は海外で飲食店で経験をしたり、生活をしてみたりしかたったので良い機会でした。

オーストラリアはコーヒーカルチャーはもちろん、飲食のカルチャーが盛り上がっているというのを聞いていたし、尊敬する先輩たちが通ってきていた国なので空気感も含めて体験してみたかったんです」

そうして30歳になる前にオーストラリアへ渡航し、1年ほど現地のレストランで経験を積むにつれ、飲食店における日本との違いを感じていたという。

「『Raw Sugar Roast​​』のオーナーでありこの店も運営している小田(政志)とは以前から繋がりがあり、日本を離れてからも色々と連絡は取り合っていていました。ちょうど仕事で小田がオーストラリアに来たタイミングで、ルーフトップのパブなんかを二人でよく巡っていてました。

オーストラリアの中でも特にメルボルンだと、ルーフトップでもカジュアルに入れるお店が当たり前のようにあって。一方で日本だと少し敷居が高くて、ラグジュアリーなお店が多い印象だったので『日本でもこんなお店があれば良いよね』とか話していたんです」

そんな会話から数ヶ月後に現在の物件と偶然にも出会い、荻原さんも帰国するタイミングに勢いで「Friend in Hand」は始動することになる。

気軽さとジャンクさ

異国の地で培った経験やセンスを散りばめた「Friend in Hand」では、都心にありながら公園へ行くような気軽さで立ち寄れる雰囲気を放つ。さらに高いクオリティは大前提のもとコーヒーやお酒、食事など様々なシーンでも楽しめるのも魅力の一つだ。

「オーストラリアやヨーロッパの飲食店を周ってきて、自分たちが好きなお店のインテリアや要素をとにかく詰め込みました。日本だとカフェバーと言っても多くの場合はどちらかに偏っていて、自由度が低いように感じていました。こういった雰囲気だけど気持ちは居酒屋ぐらい気軽に来れる場所を作りたかったんです」

そんな同店ではドリンクはもちろん、フードにも強いこだわりを持ってメニュー作りが行われている。提供されるのは海外のパブで見られる定番メニューにインスピレーションを受けた、ボリュームのあるマッケンチーズやサンドイッチなどだ。

「フードは味だけでなくボリュームも意識をしていますね。『量は少ないけど美味しい』ではなく良い意味でジャンクなお腹も満たせるサイズ感、なおかつ価格面でもなるべく気兼ねなく足を運んでもらえるように努めています」

昼も夜も、シーンも問わずに

まだオープンからわずか3ヶ月ながら、早くもこの表参道という場所でファンを獲得している「Friend in Hand」。その人気の理由はこのエリアでは珍しい12:00〜0:00までという営業時間も関係しているのかもしれない。

「Friend in Hand」では営業時間であればお昼にアルコール、夜でもコーヒーが楽しめる。これは荻原さんたちが当初から目指していた時間やシーンを問わず、気軽に立ち寄れる空間作りをまさに体現していると言えよう。

「コーヒーでもフードでも夜遅くまでやっているお店も周辺は少ないので、そういう意味でもこのエリアで新しいカルチャーを作れると思っています。お昼も夜も自由に利用される方が段々と増えてきて、当初やろうと思っていたことが皆さんのニーズにも合致たんだなと感じています」

仕事終わりの一杯や食後のコーヒーを嗜みに、看板のないこの場所へ訪れて9階のボタンを押してみよう。

DESTINATION STORES | File 52
フレンドインハンド | Friend in Hand
東京都港区北青山3-6-20 KFIビル 9F
営業時間:12:00〜00:00
https://www.instagram.com/friendinhand.tokyo/