デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド
File 054:TAWKS(東京都・亀有)
スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。あの国民的漫画でもその地名は知られている葛飾区・亀有。いまだ東京の下町の香りが色濃く残るこのエリアに誕生した、File 054のコーヒースタンド「TAWKS」は、型破りな空間にあるコミュニティが魅力の新スポットだ。
Text Takaaki Miyake
亀有のニュースポット
JR常盤線の亀有駅から高架線沿いを約15分ほど歩くと、突如目に入ってくる「SKWAT」のネオンサイン。圧倒的なスケール感を誇るスペースには、設計事務所の「DAIKEI MILLS」やアートブック専門のディストリビューター「twelvebooks」、イギリスのレコードショップ「VDS(Vinyl Delivery Service)」、そして今回のコーヒースタンド「TAWKS」が混在する。
都市にある空き家を占拠することで、人々のつながりや新たなクリエイティビティを生み出すことを目的に「DAIKEI MILLS」がスタートしたプロジェクトの「SKWAT」。2020年から表参道に構えていた拠点は昨年2023年7月で営業を終了し、以前から亀有への移転を発表していた。
2024年11月2日(土)に「SKWAT KAMEARI ART CENTRE(SKAC)」として名前も新たに移転オープンを果たしたが、アートやデザイン、建築や音楽など様々な要素が交わるこの場所で、食の役割を担うのが「TAWKS」だ。
イギリスでさらに培ったコーヒー愛
コンクリートの打ちっぱなしや大判のガラス窓などが作り出す無骨な印象の「SKAC」は、どこかイギリスのブルータリズム建築を感じさせる。その一角でコーヒースタンド「TAWKS」を手かげる清水翔太さんに話を聞くと、イギリス・ロンドンの人気カフェ・ベーカリー「 JOLENE aka BIG JO」でバリスタとして手腕を振るっていたそうで、建物との調和にも妙に納得した。
「ロンドンへ行く前は日本橋の SR Coffee Roaster & Bar という場所で、マネージャー兼バリスタとして働いていました。昔から一度は海外での生活を経験したいという想いと、仲の良い友達たちが割とロンドンに行っていたので、割と軽い気持ちでワーキングホリデーに申請をして渡英したんです。
コーヒー自体ももちろんですが、コーヒー屋があることによって形成されるコミュニティが好きなんです。そこに集まる人の輪の広がりや、ポジティブさも含めて。だからこそ、コーヒーがイギリスでどんな風に生活に馴染んでいるのかも見たいなと思いました」
現地で実際に感じたのは、コーヒーに対する英国人の日常的な愛情だった。元来の喫茶店文化に加えて現在のスペシャリティーコーヒーなど、味への追求や独自のコーヒーカルチャーが拡がる日本。イギリスではより大衆化され、行列もできる人気店でコーヒーを作りながら、日本のお茶の文化のようなカジュアルさを体感していたという。
そして1年半ほどが経過したタイミングで今後について考えていたところ、ある日声をかけられたのが「SKWAT」の中心メンバーである中村圭佑さんだった。
会話を生み出す仕掛け
「(中村)圭佑さんとは以前から知り合いで、ある日電話がかかってきたんです。『新しい拠点では色んなコンテンツの中にコーヒーも入れたいから、日本に帰ってきたらまずは亀有においでよ』と。正直亀有がどこかもあまり分かってなかったのですが、実際にこの場所に来たら圧倒されて、すぐに心を決めました」
当初よりも施設全体のオープン時期が伸びてしまったその間、「TAWKS」の準備だけでなく、アートブックの「twelvebooks」の梱包や検品作業も一緒にやりながら「SKAC」の完成する姿を横目で見ていた清水さんは、その最中も「会話のきっかけが生まれる空間作り」を考えていた。
「店名の由来は“話す”を意味するTALKSから来ているのですが、僕自身がお喋りが好きなんです。自分がお客さんと話すのもだけど、別々の友達が仲良くなったり、同じお店の常連さん同士がその場で会話を始めたり。コミュニティってやっぱり会話の中で生まれると思うので、そういった場所を作っていたい気持ちが強くありました」
そしてここではこだわりのコーヒーだけでなく、視覚的にも刺激される空間が広がる。堂々と置かれたアートピースやスタッキングのバスケット、工事現場の足場などは全て“座席”。“視点を変えて価値の転換をする”という「SKWT」の思想が反映されている。
閉鎖的でなくオープンに
これだけ型破りでも、決して限られたコミュニティだけに向き合うのではなく、あくまで誰に対してもオープンであり、ローカルフレンドリーというのが「SKAC」、そして「TAWKS」の徹底した姿勢だ。
「今まで良い人に出会えたからこそ今の自分があるので、この場所を通じてこれから会う色々な人たちにお返ししていきたいです。コーヒー屋ってそういう意味でも場所としてすごく便利だと思います。
人の流れが早いエリアだとなかなか難しいので、亀有というゆったりしてる場所で地元の人にも知ってもらえると嬉しいですね。他のエリアから来てくれた人は、周辺の飲食店なども楽しんでいってほしいです。常に流動的でありたいので、自分の好きなモノやヒト、コトを発表したり、提案ができる場にはしていきたいと考えています」
様々な人やカルチャーが交差し、コーヒーを好きな座席で楽しんだ後は、アートブックにレコードも待っている「SKAC」。東京でも随一のマストゴーなスポットになりそうだ。
DESTINATION STORES | File 54
トークス | TAWKS
東京都葛飾区西亀有3-26-4
営業時間:8:00〜18:00(平日)、11:00〜18:00(土日祝日)
定休日:月・火
https://www.instagram.com/tawks___/