BEHIND THE PRODUCT #3
2022.01.15

「テック系アウター」 前編

ファッションプロダクトのストーリーやその裏側にあるあれやこれやを、少しだけ厳しい目線と深いプロダクト愛でお届けする連載企画。雑誌『PRODISM』編集長の渡邊敦男と『HONEYEE.COM』編集長の武井幸久、そしてスタイリストの来田拓也が毎回テーマを決めてピックアップしたモノについて縦横無人に語ります。「テック系アウター」前編では保温性の高い注目プロダクトを5ブランドからピックアップ。


Edit&Text : Atsuo Watanabe(PRODISM)&Yukihisa Takei(HONEYEE.COM)
Styling : Takuya Raita
Photo : Kengo Shimizu


halfTen canterbury

DEFENDER PUFF COAT

“こんなテイストの服がCANTERBURY​​のお店に置いてあること自体が新鮮”(渡邊)

来田拓也(以下 R):最近リリースされたhalfTen canterbury​​です。50年くらい続く有名なインビスタ社のファブリックを使いつつ、中綿には光電子エナジーコクーンを用いて、軽量で保温性の高い仕様になっています。リサイクル新素材ですが、ダウンのような膨らみがあります。

武井幸久(以下 T):これってnonnativeの藤井(隆行)さんが、ラグビーブランドのCANTERBURY​を監修したものだよね?

渡邊敦男 (以下 W): そうですね、 次のラグビー世界大会に向けて、藤井らしい新しいアプローチで機能的なプロダクトを展開していくそうです。

T:プレスリリースを読んだときからめちゃくちゃ気になってた。モノもさすがって感じ。

W:既存のCANTERBURY​​にはないデザインとかアイデアがプラスされているから、コラボレーションの本質を捉えているなって思います。こんなテイストの服がCANTERBURYのお店に置いてあること自体が新鮮なんじゃないかな。

T:しかもプライスもそんなに高くないし、nonnativeの服が欲しい人も一見するとデザイン感は近いから、こっちの価格で買えるんだったらっていう人もいると思う。

R:デザインが面白いですしね。

W:あと、めちゃくちゃ温かい。

T:光電子エナジーコクーンだから?

R:そうですね。しかもストラップが付いてて、暑い時に脱いでも背負えるようになってるんです。

T:それこそ『PRODISM』で、この前nonnative特集やってましたよね? 藤井さんはこういうモノづくりの話とかもしてました?

W:マインドの部分の方が多かったですね。具体的でテクニカルな話よりも、「背伸びするのをやめて自分に出来ないことは理解して、自分が作れることの方を伸ばして行こう」みたいな。5年前に葉山に拠点を移して、そこからライフスタイルと一緒に考え方とかも変わったみたいです。

T:藤井さんって10年ぐらい前に取材したときから、こういうテックウェアを日常着の延長にする姿勢が一貫して変わってない。

W:日常着を作るのが上手いですよね。

T:テックウェアを着ていても、知らない人にはそう思わせないデザインですよね。

W:過剰なウンチクがなくても、着心地とか見た目で着てくれればOKみたいな。halfTenにもそれが結構反映されているのかなって。こういうコラボがない限りCANTERBURYの服を普段着として選ぶことも少ないし。僕からしたらこのポイントが一番大きいかも。

T:これで初めてCANTERBURY知った人もいるだろうしね。

R:実は僕もラグビーブランドだったことは初めて知りました。

T:ロゴも目立たないし、ラグビー好きじゃなくても着れそうだよね。シルエット的には軍モノっぽいのかな?

R:モンスターパーカっぽいですよね。この独特のサンドカラーが良いし、そこが藤井さん上手いなぁって思います。

W:今回ピックアップしてくれた服ってベージュ系の色が多いけど、それらと比べても違う。藤井“ベージュ”隆行の実力が遺憾なく発揮されています。

nonnativeデザイナーの藤井隆行が、ラグビーブランドのCANTERBURYの新レーベルを監修して生まれた新ブランド。強度と耐久性に優れたインビスタ社のCORDURA®ファブリックを使用し、光電子®ENERGY COCOONが遠赤外線エネルギーを利用して保温性を確保。水の浸透を抑制し、防汚性にも優れた耐水撥水加工も施されている。見た目以上にハイスペックでプライスもお手頃。

halfTen canterbury
DEFENDER PUFF COAT
 ¥74,800/ハーフテン カンタベリー TEL: 0422-29-7150



MOUT RECON TAILOR

Wild Things × MOUT Denali Jacket

“「マツボックリの持つ自動開閉機能に着目」ってヤバい”(武井)

R:次はWild Things × MOUT RECON TAILORのDenali Jacketです。

T:MOUT RECON TAILORってどんなブランド?

R:結構マニアックなブランドで、実は僕も今まであんまり馴染みがなかったです。

W:日本のブランド?

R:はい日本ブランドで、銀座のCATHEDRALというお店で取り扱いがあったのでピックアップしました。今回の企画にぴったりかなと。

W:来田君がツボをついたセレクトをしてきた(笑)。その通りじゃないかな。

R:これ自体はWild Thingsの軍モノラインのLevel7を踏襲しているみたいです。

W:Wild Thingsってアメリカ軍の特殊部隊に服を供給してたもんね。これはデナリジャケットではあるけど、見た目がデナリジャケットじゃないのが面白い。

T:いわゆる定番のデナリジャケットに手を加えてるのか。どこを変えてるんだろう?

R:表地にスイスの老舗ハイテク素材メーカーSchoeller社のハイテク素材“C_Change”を採用している点が最大の特徴かと。

T:「マツボックリの持つ自動開閉機能に着目」ってヤバい……。自動透湿コントロール付完全防水透湿性4ウェイストレッチとか未来でしかない(笑)。

R:ちょっと攻撃的っていうか、サバイバル的なノリの洋服を作っているイメージがあったんですけど、スペックを見るとちゃんとハイテクなんだなって。

T:今冬、それこそ急にモンスターパーカを買おうかなと思い、Wild Thingsのレギュラーモデルを見にいったんだけど、他の人と被りそうで止めちゃいました。モンスターパーカって着たことあります?

R:僕もないですけど、今の気分的に欲しいっすよね。あと、今はArc’teryxの流れから、ハイテク系の素材はすごく強いですよね。

T:そして最近やたらと耳にするのがECWCS。拡張式寒冷地被服システムっていう軍隊のもので、それを踏襲するブームになっている気がする。昔はこんなにECWCSって文字を頻繁に見なかったけど。

W:特殊生地って男のロマンみたいなところもあって、購入ポイントの指標になる。普通のナイロンより、意味不明でも高機能素材とか使っている方が買いたくなるのかなって。街で着るにはオーバースペックなのかもしれないけど、心に安心感とか優越感みたいなのが植えつけられる。悦に浸れるっていう意味でもハイテク素材って良いなって思う。

T:なんで日本人の男ってこんなに機能アパレル好きなんだろうって、我ながら思うよね。

R:これは触り心地も上品。このWild Thingsのパッチがなければ、めちゃくちゃカッコいいんですけどね(笑)。

W:なんでそのパッチを付けちゃったんだろうね。多分軍モノのディテールの名残で、本当は勲章のバッジとか付けるんじゃない?

R:こういうマットな質感のアウターが好きなのですが、あまり見かけない。ゆえに完成度の高い一着だと思います。

T:値段はどうなの?

R:結構高くて15万円ぐらいはします。だけど使っている生地と機能を考えると納得できる感じかと。

米軍の特殊部隊向けに衣類を開発してきたWild Things Tacticalの中でフラッグシップモデルであったDENALIジャケットを現代のスペックに再構築。米軍の寒冷地用ECWCSの最上級Level7の中綿素材を、水を一切吸収しないSLIMASHIELD APEXにアップデート。表地は通常GORE-TEXのところを、スイスのハイテク素材メーカー、Schoeller社のC_Change®に変更。マツボックリの自動開閉機能に着目して開発した自動透湿コントロールに完全防水、4WAYストレッチなど、現代のテクノロジーがこれでもかと満載。

MOUT RECON TAILOR
Wild Things × MOUT Denali Jacket
¥170,500/ワイルドシングス × マウト リコンテーラー TEL: 03-5354-6088



White Mountainnering

GORE-TEX INFINIUM TWILLED PADDED N-3B

“最近の相澤が作る洋服って非常に完成度が高いと思います”(渡邊)

R:お次はWhite Mountaineeringです。

W:お、相澤(陽介)先生の作品ですね。

T:これ素材にSOLOTEX使ってるんだ。

R:裏地はGORE-TEX INFINIUMのWINDSTOPPERで、シルエットにもこだわっていますね。

W:まあ、シルエットにこだわってないファッションブランドの服ってありえないよね。こだわれないなら、やめちまえ!って話です(笑)。

T:そりゃそうだ(笑)。でも本当に相澤さん流石だなって感じしますね、これ。

R:安定感がありますし、刺繍を同色の茶色でやるとか細かいところまでこだわりが感じられますよね。

T:あとは素材をパッチワーク的に捉えてるポケットの切り替えしとか、ちゃんとファッションに仕上げてきている。しかも思ったより高くない。すみません、いつも値段のことばかり言って(笑)。White MountaineeringでGORE-TEXを使っているから15万円くらいはするのかと思ってた。

R:機能的にはGORE-TEX INFINIUMのWIND STOPPERなので、防水よりも防風って感じですね。

T:でも都会では十分だろうな。SOLOTEXとGORE-TEX INFINIUMは具体的にどこに使い分けてるの?

R:表地が多分全部SOLOTEXになっていると思います。だから風を通さない、デザイン性の高い、シワにならない洋服ってことですね。街とアウトドアの良いところも上手いこと組み合わせていますし。

W:数年前のWhite Mountaineeringって生地とかめちゃくちゃこだわってて、ちょっとお腹いっぱいな感じだったんだけど、この服を見ると今が一番良い状態なんじゃないかな。シルエットも綺麗だし、ポケットなどのディテールワークも無理がない。10年以上はWhite Mountaineeringのプロダクトを拝見していますけど、最近の相澤が作る洋服って非常に完成度が高いと思います。

T:長年見ているからこそ敦男さんの言葉が重いですね。確かに最近展示会行って実際に見ると、やっぱり良いなって思うことが増えた。一時の流行のデザインじゃなくて、長年使えそうな感じがしますよね。気に入れば何年でも着られそうな雰囲気もあって。

ミリタリーのN-3Bをベースに形状安定性のあるSOLOTEX®のツイル生地を使用することで、着心地の軽さ、滑らかな質感、シルエットの立体感も追求。表地にGORE-TEX INFINIUMのWIND STOPPERを搭載し、防風と透湿性も確保。中綿がキルティングになっているので防寒性も備えている。パーツごとに変えたブラウン系の配色にも注目。

White Mountainnering
GORE-TEX INFINIUM TWILLED PADDED N-3B
¥99,000/ホワイトマウンテニアリング TEL: 03-6416-5381




F/CE.® × NANGA

FIRE RESISTANT BLOCK COAT

“F/CE.®ってキャンプが流行る前からキャンプを推してましたね。”(来田)

W:次のこれは武井さん推しのF/CE.®?

R:はい、F/CE.®とNANGAとのコラボものです。

T:最近のF/CE.®は特に良いなと思って今回ピックアップしてもらいました。

W:僕はブランドの詳細は知らないんですが、実際に服を見るとその良さは分かりますね。

T:NANGAって元々は寝袋メーカーだったのに、すっかりコラボ先の一つとして確立されたよね。

W:ですね、色んなブランドがダウンでコラボしてます。

R:特にこのアウターに関しては収納力がすごいです。

W:僕はカバンを持たないから個人的には結構良いかも。

R:確かにこれならカバン要らずかもしれませんね。特徴としては760フィルパワー、撥水、シークレットポケットと、機能面も申し分ないです。

W:でも、これはウンチクよりも、シルエットだったりデザインだったりがセールスポイントなのかな? 高級なダウン使ってるんでしょ?

R:そうですね、まとめると高級ダウンを使用して耐水圧、あとは難燃性素材。今年は難燃性素材を使っているアイテム多いんですよ。

W:昔、難燃素材の服をキャンプファイヤーに近づけて撮影しようとしたら、ブランドからNGになったことがあったな(笑)。まあこのダウンはクオリティ高いと思います。

T:F/CE.®はどんどん良くなってますよ。

R:バッグから始まって、今ではコレクションブランドですもんね。

W:F/CE.®はダウンとか他にも結構リリースしてるんですか?

T:ダウンはNANGAと何シーズンかやっていて、いわゆるシェル系のテックウェアもあります。

R:キャンプシーンでも使えそうですよね。

T:White Mountaineeringとかに比べると、感覚的にちょいカジュアルかな。そこまでファッションな人じゃなくても、割と取り入れやすいっていう良さがあるかもしれない。

W:どこで買えるんですか?

T:この前、代官山の直営店がリニューアルしたので、ラインナップをチェックするならオススメです。

R:F/CE.®ってキャンプが流行る前からキャンプを推してましたね。

W:そもそも、真冬ってキャンプするの? そんな寒いときにこのダウンを着て酒飲んでみたいな感じなのかな。僕はキャンプとかしないので、初歩的な疑問かもしれないけど。

T:それこそColemanの大きなヴィンテージテントなどを買う人とかいて、冬場はそこに薪ストーブをセットして完全防備みたいな人は増えているみたいですよ。

W:家族で行って、子供たちにキャンプ生活を覚えてもらうっていうのは良いですよね。でも、いい大人たちが酒飲んでワイワイしたいからって極寒の冬シーズンにキャンプするのは微妙だと思う。風邪引いたらシャレにならんでしょ(笑)。

T:うん、気軽に行くととんでもないことになるらしいよ(笑)。

定番化しつつあるF/CE.®と日本国内屈指のダウンファクトリーであるNANGAによるエクスクルーシブライン。今回紹介する新型のハーフ丈ハンティングコートは、ダウンステッチをブロック状にしたモダンな印象のモデル。ヨーロッパの質の高い羽毛を使い、日本の職人がハンドピックした高品質ダウンを使用しており、軽量ながらボリューム感も。F/CE.®が開発した防水透湿性に優れたオリジナルファブリックの”FLIGHT“を使用している。雪だけでなく雨にも強いところが大きな特徴。

F/CE.® × NANGA
FIRE RESISTANT BLOCK COAT
¥99,000/エフシーイーフラッグシップストアトウキョウ TEL : 03-6452-5867



nonnative

RANCHER 2WAY JACKET POLY TWILL Pliantex®︎ WITH ACRYLIC PILE

絶妙なシルエットで、シンプルだけど見るとnonnativeだって分かる服作りしている”(武井

R:nonnativeのリバーシブル仕様のウィンドストッパーアウターです。

T:これは藤井(隆行)さんの上手さが際立つとしか言えない。しかも表と裏で全然表情が違うね。Pliantexって素材は初めて聞きました。

W:裏にすると一気にアメカジっぽくなりますね。アウターなのかシャツなのか分からないくらいのタイトさが良いです。

R:シャツ型のアウターって珍しいですね。

W:保温性もしっかりしてそうだから、冬でもインナーはTシャツで良さそう。

R:実際に着ると結構暖かいです。

W:これはちょっと汚して着ても、味が出てきて良いかも。シルエットや素材もそうだけど、今のアメカジってこういう塩梅なんだなって感じがしますよね。

T:ボアが外側の状態、めちゃくちゃカッコいいよ。

W:寒かったらボアを中にして着れば防寒性も上がるってことか。色もこの辺りのベージュ使いって上手いですよね。

T:藤井さんの服って、後ろの裾が長いのが特徴ですよね。あと腕の絞りとか、立体的なんだけどギャザーが入ってるところとか。

W:多分動きやすさみたいなのを考慮しているのでしょう。

T:絶妙なシルエットで、シンプルだけど見るとnonnativeだって分かる服作りしているんですよね。

W:やぱり洋服オタクが作ってるプロダクトだから、自然と細部にまでこだわってしまうんだろうなって感じですね。

T:結局、毎日こういう服を着ちゃいますよね。朝って瞬間的に洋服を選んじゃうけど、これも「昨日も着たけど今日もこれでいいや」みたいな感じになる良さがある。

W:もはやクローゼットにかけない感じがしますよね。イスの上にかけといて、ずっと着続けるみたいな。

R:ボアものって今季はすごい勢いがあるし、完成度も高い印象です。

T:昔、藤井さんを取材したときに「クローゼットの一番手前に置かれる服を作りたい」って言ってましたけど、今でもその考えはブレていないのが表れていますね。

防風性に優れたPliantex®素材のCPOジャケットと、毛足長めのフリースジャケットの2WAYリバーシブル仕様。襟やサイドポケット、脇にコーデュロイを使うなど、シンプルな中にもアクセントが。リバーシブルと言いながら、大抵はどちらか一方になりがちだが、このジャケットはかなり“両A面”感のあるデザイン。

nonnative
RANCHER 2WAY JACKET POLY TWILL Pliantex®︎ WITH ACRYLIC PILE
¥91,800 / vendor TEL: 03-6452-3072



(左から) 渡邊敦男(『PRODISM』編集長)、スタイリスト 来田拓也、武井幸久(HONEYEE.COM)



渡邊敦男(『PRODISM』編集長)

1973年生まれ。『Asayan』、『Huge』などの編集を経てフリーランスに転身。2013年にプロダクトにフォーカスした雑誌『PRODISM』を創刊し、現在も編集長として活動中。メンズファッション、スニーカー、ストリートウェアに通じており、独自の美学を持つ。

スタイリスト 来田拓也

1986年生まれ。甲斐弘之氏に師事し、2012年に独立。メンズファッション誌を中心に活躍。トレンドを敏感に取り入れたプロダクトスタイリングにも定評がある。現在アシスタント募集中。

武井幸久(HONEYEE.COM)

1972年生まれ。雑誌『EYESCREAM』の編集者を経てHONEYEE.COMの編集長に就任しつつ1年で退任。フリーの編集者、クリエイティブディレクターとしてブランドサイトやメディアの立ち上げに携わり、2021年秋にHONEYEE.COM編集長に出戻り就任。