「2022SS注目スニーカー」 後編
ファッションプロダクトのストーリーやその裏側にあるあれやこれやを、少しだけ厳しい目線と深いプロダクト愛でお届けする好評連載企画。雑誌『PRODISM』編集長の渡邊敦男と『HONEYEE.COM』編集長の武井幸久、そしてスタイリストの来田拓也が毎回テーマを決めてピックアップしたモノについて縦横無尽に語ります。「2022SS注目スニーカー」編では5つのブランドから厳選ピックアップ。
Edit&Text : Atsuo Watanabe(PRODISM)&Yukihisa Takei(HONEYEE.COM)
Styling : Takuya Raita
Photo : Kengo Shimizu
eye JUNYA WATANABEMAN × New Balance
New Balance 574
“スニーカーマニアが好きそうな、収集向けのシューズではない雰囲気も良い”(渡邊)

来田拓也(以下 R):今回のコラボレーションは特に配色がめちゃくちゃ良いですね。
武井幸久(以下 T):ベースは?
渡邊敦男(以下 W):574みたいだね。
R:コレも即完売するんですかね?
W:どうだろう。結構な速度でなくなるとは思うけどね。っていうか、なくなるスピードとか意味あるのかな? 今回も単なるスニーカー好きぐらいの人だと、上手く履きこなせないデザインに仕上がっていると思う。実はスタイリングの難しい配色だよ。
T: グリーンのカラーリングが実に良い。
W: 俺はグレーをショーツで合わせたい。それにしても余裕を感じるコラボレーションだよね。
R: いつも程良いところを突いてきますからね!
W: 踏み込みすぎずに、サラッとやってるのがカッコいい。
T: あえて574とかシュータンのデザインに入れてないとか高度だよね。
W: あくまでも服に合わせるための靴だから、スニーカーマニアが好きそうな、収集向けのシューズではない雰囲気も良いですね。
幾度もコラボレーションを行なっているeye JUNYA WATANABEMANとNew Balanceによる新作。今シーズンは、New Balanceのインラインでも4月発売予定のニューモデル、574 Legacyをベースにマルチカラーで3色が登場。
eye JUNYA WATANABEMAN
NEWBALANCE 574 ¥28,600/eye ジュンヤ ワタナベ マン
コム デ ギャルソン
TEL : 03-3486-7611
CONVERSE ADDICT × NEXUSⅦ.
ONE STAR LOAFER
“すごくさりげないコラボ。デザインからはNEXUSⅦ.って分からない”(武井)

W: コレNEXUSⅦ.のコラボなんだ! 今野(智弘)くんもマニアックな形を持ってくるなぁ。
R: ローファータイプのCONVERSEのスニーカーって、元々はベースが黒らしくて。だけど、これまであまり黒で出てなかったから、今野さんのリクエストでオリジナルのブラックカラーのスウェードで作ったそうです。
W: じゃあ元になる昔のベースがあるってことだね。
R: ソールとかが変わってるので復刻ではないんですけど、90年代のオリジナルモデルをアップデートした感じかと。
T: すごくさりげないコラボだよね。ソールにブランド名が書いてあるぐらいで、デザインからはNEXUSⅦ.って分からない。
W: そのサラッと感が今野くんらしい。でも仕上がりは極めてモダン。
T: CONVERSEだけどブラックだから、ちょっとシックなのがまた。
W: アップデートとかブラッシュアップの一番正攻法なやり方ですよね。昔のオリジナルベースがあって、それを今のリアルなプロダクトに作り変えるっていう。
T: CONVERSE ADDICTは変わらず人気なんだね。
W: でしょうね。だけどCONVERSEは28.5cmの木型を作ってないらしく、その時点で俺は自分のジャストサイズが履けないってことになる。これはヒモがないから28cmでも履けるかもしれないけど。
T: 自分のサイズがないのは寂しいね。
W: 28.0cm前後がゴールデンサイズといわれているのにも関わらず、28.5cmを作ってない。マジで昭和かよって突っ込みたくなる。欲しいスニーカーがたくさんあるのに、自分が履けないから他人事になっちゃう。無理して29.0cmを履くのも嫌だしね。といいながら、もし28.5cmを作っていたらごめんなさい。
ONE STAR ROAFERがCONVERSE ADDICTで登場するのは二度目。NEXUSⅦ.とCONVERSE ADDICTは初のコラボレーションとなる。アッパー、ライニング、ソールをブラックで統一した90年代のディティールを再現。
CONVERSE ADDICT × NEXUSⅦ.
ONE STAR LOAFER ¥24,200※5月発売/コンバース アディクト × ネクサスセブン
コンバースインフォメーションセンター
TEL : 0120-819-217
THE NORTH FACE × Hender Scheme
HS VECTIV Escape
“VECTIVは本当に一回履いてほしい”(渡邊)

W: このVECTIVって異常に履きやすいんですよ。インラインのカラーを持ってるんですけど、自然に足が踏み出していく感覚がクセになる。
T: 実体験は説得力あるな。このソールの形すごいね。
R: 今回のコラボがVECTIVっていうのに魅かれました。
T: そんなに有名なモデルなんだ。
W:VECTIVはTHE NORTH FACEが数年前に発表した、ロッカー構造の新しいテクノロジーです。歩いていても全く疲れないし足が痛くならないから、個人的にはVECTIVは好き。
R: 僕も『PRODISM』の記事でVECTIVのスゴさを知りました(笑)。これはレースがHender Scheme仕様になって、より都会的な感じになっていると思います。
W: VECTIVは本当に一回履いてほしい。アッパーの配色がシーズンによって変わるから好き嫌いはあるけど。THE NORTH FACEの靴って、他モデルを含めて侮れない。
T: その割に注目されてないよね。スニーカーの括りの中では語られないけど、知ってる人は知ってるみたいな。
W: 今回は加えてHender Schemeのお洒落さが出てる。
T: Hender Schemeのやるコラボって本当に毎回人気だよね。
R: 特にTHE NORTH FACE × Hender Schemeの組み合わせは欲しくなります。街で使えるデザインなのにハイテク機能が落とし込まれてるんで。
W: 怒られるかもだけど、知るひとぞ知る名品の存在でいてほしいから、VECTIVは今くらいの認知度が個人的には良いんですけどね(笑)。
2020 FWよりスタートした THE NORTH FACE×Hender Schemeの第3弾。「変わるもの、変わらないもの」をテーマに、両ブランドの素材や機能、耐久性、普遍性など、それぞれのアイデンティティーをコンバインしている。これはレザーシューズのウィングチップを進化させ、クイックプルレースと融合させたHS VECTIV Escape。
THE NORTH FACE × Hender Scheme
HS VECTIV Escape ¥26,400/ザ ・ノース・フェイス × エンダースキーマ
スキマ 恵比寿
TEL : 03-6447-7448
ASICS
GEL-NANDI SP V
“このシリーズはフューチャーっぽくて、テック系の洋服と相性良いです”(来田)

R: キコ・コスタディノフ・スタジオ監修のASICSです。バスケットボールシューズとか、色々なASICSのモデルをミックスして作った一足になっています。
T: 見た目はアウトドアトレッキング用みたいだけど、ハイブリットしてるんだ。
W: うーん、キコの手がけたデザインとしてはイマイチじゃない? あんまり“らしさ”を感じない。キコとASICSのコラボって、シーズンによって当たり外れがあって、言うなればギャンブル要素の強いシリーズだと思ってます。
R: 前回のASICSのロゴがサイドに入った紫のシューズは、アニメの世界だなって思いました。今回のはGORE-TEX®を使っていて、値段も手頃だしコスパが良いなって。
W: 俺はこのサイドに付いてるロゴが嫌なんだよなぁ。
T: いや、だってこのロゴがASICSだから(笑)。
R: 最近のASICSって見直されてる気がしますよ。
T: わかる。コレではないけど、前にキコがデザインしたやつとか欲しいモデルあるよ。
R: このシリーズってフューチャーっぽくて、テック系の洋服と相性良いですしね。まだ持ってないですけど、個人的には一足欲しいなっていう。
W: キコとのコラボのデザインって、総じて賞味期限が短いですよね。下手したら数回履いただけで飽きちゃいそう。もちろん、ファッション性が抜群に高いので仕方のないことだとは思うけどね。
R: まあ攻撃的ではありますよね。普段履きとなると気負いしちゃうのも分かりますけど、プロダクトとしてはカッコイイなって思います。
W: オシャレなプロダクトを作ろうっていうテンションは素晴らしいよね。それにしてもロゴは外した方が良いと思うけどな。
R:(笑)。
T:理由は?
W: 僕らの世代って、このロゴ=昭和の運動靴っていうイメージが強い。海外ブランドが世界に向けて発信するならアリだと思うけど、日本人に向けてこのロゴをレガシーでカッコイイとか提案するのは微妙かなと。でも若い世代は関係ないか。そんなことよりもロゴとかの制約をなくして、デザイナーに自由にデザインさせる方が、コラボレーションの健全なあり方だと思う。まぁ余計なお世話ですね、はい。
キコ・コスタディノフ・スタジオ監修のASICSのインラインシリーズの新作。このモデルはバスケットボールシューズとトレイル由来のシューズという異色の組み合わせ。 「GEL-BURST SP V」のアッパーデザインと「GEN-NANDI」のツーリングとを融合させて、ブーツライクに仕上げた。GORE-TEXファブリクスを搭載している全天候型。
HS3-S GEL-NANDI SP V ¥18,700/アシックス
アシックスジャパン株式会社 お客様相談室
TEL: 0120-068-806
NEEDLES
Asymmetric Ghillie Sneaker
“NEEDLESってパープルの使い方が世界でもトップクラスじゃないかな”(渡邊)

R: NEEDLES定番のオリジナルスニーカーの新型です。今回はフォルスタンが付いていて、デニムとレザーの組み合わせも初です。左右非対称なデザインなのも注目ポイント。
T: 本当だ。細かいところが微妙に左右非対称になってるね。気付かないでしばらく履いちゃいそう。
W: そういう解説がないとB品かと思っちゃうけど、配色がめちゃくちゃいいね。これは差し色程度だけど、NEEDLESってパープルの使い方が世界でもトップクラスじゃないかな。
T: このシューズも履き込むとデニムとレザーの部分に味が出てくる、そういうカッコよさのある靴だよね。
R: NEEDLESって昔から人気あったんですか?
T: やっぱり前はブランドっていう認知じゃなくて、Nepenthesのオリジナルって印象だったかな。
R: ここ5~6年は本当に人気がすごいから意外です。
T: セレクトショップがポップアップやったり、Nepenthes以外で取り扱いが始まった頃からブランドとして確立された気がする。
W: 確かにその頃から作ってるプロダクト自体が、すごくお洒落な感じになってきましたよね。
R: まだジャージのセットアップが流行る前に、渋谷でスキンヘッドの強面の人が着てるのがすごくカッコよくて、まだ覚えてます(笑)。
スニーカーの形はNEEDLESの定番。西海岸をテーマにデニム素材のアイテムを多く取り入れたコレクションの中の1アイテムで、アッパーはデニムとスウェードのコンボで、取り外し可能なフォルスタンもスウェード仕様。左右非対称なデザインになっているところもポイント。
NEEDLES
Asymmetric Ghillie Snecker ¥30,800/ニードルズ
ネペンテス
TEL : 03-3400-7227

(左から) 渡邊敦男(『PRODISM』編集長)、スタイリスト 来田拓也、武井幸久(HONEYEE.COM)
渡邊敦男(『PRODISM』編集長)
1973年生まれ。『Asayan』、『Huge』などの編集を経てフリーランスに転身。2013年にプロダクトにフォーカスした雑誌『PRODISM』を創刊し、現在も編集長として活動中。メンズファッション、スニーカー、ストリートウェアに通じており、独自の美学を持つ。
スタイリスト 来田拓也
1986年生まれ。甲斐弘之氏に師事し、2012年に独立。メンズファッション誌を中心に活躍。トレンドを敏感に取り入れたプロダクトスタイリングにも定評がある。現在アシスタント募集中。
武井幸久(HONEYEE.COM)
1972年生まれ。雑誌『EYESCREAM』の編集者を経てHONEYEE.COMの編集長に就任しつつ1年で退任。フリーの編集者、クリエイティブディレクターとしてブランドサイトやメディアの立ち上げに携わり、2021年秋にHONEYEE.COM編集長に出戻り就任。