BEHIND THE PRODUCT #21
2022.11.18

ファッションプロダクトのストーリーやその裏側にあるあれやこれやを、少しだけ厳しい目線と深いプロダクト愛でお届けする好評連載企画。雑誌『PRODISM』編集長の渡邊敦男と『HONEYEE.COM』編集長の武井幸久、そしてスタイリストの来田拓也が毎回テーマを決めてピックアップしたモノについて縦横無尽に語ります。今回も5つのブランドから気になる最旬アイテムをピックアップ!




Edit&Text : Atsuo Watanabe(PRODISM)&Yukihisa Takei(HONEYEE.COM)
Styling : Takuya Raita
Photo : Kengo Shimizu


THE NORTH FACE PURPLE LABEL

ツイードマウンテンパーカー

“クラシックな雰囲気でハイテクっていうのは、言わばこのブランドのお家芸”(渡邊)

来田拓也(以下 R): THE NORTH FACE PURPLE LABELから、GORE-TEX INFINIUM™を使ったツイードのマウンテンパーカーです。風を通しやすいツイードにハイテク素材をを加えることによってそれを解消。襟裏がコーデュロイになっていてクラシックなディテールが魅力的なアイテムかと。ツイードのマウンテンパーカーって懐かしくて良いなと思って。

渡邊敦男(以下 W):クラシックな雰囲気でハイテクっていうのは、THE NORTH FACE PURPLE LABELの面白さの一つだよね。シンプルなデザインだけど、機能的な素材が使われているみたいな。言わばこのブランドのお家芸。

武井幸久(以下 T):最近色々なテックウェアを見る機会があったんですが、こういうクラシックな雰囲気のテックウェアもあったなって改めて気付かされました。今までもこういったアイテムはあったんですか?

R:昔はシェルに柄モノの生地を合わせたアイテムは結構ありましたけど、最近はプレーンな単色のウェアの方が主流ですよね。

W:飽きがこないし大人っぽいから、時代に左右されずにいつでも着られそう。

風を通しやすいHarris Tweed にGORE-TEX INFINIUM™を合わせるという発想が実にこのブランドらしい、”シティテック”ウェア。外見はあくまでもクラシックながら、その機能はアウトドアウェアに近いというのが実に魅力的。

nanamica
Harris Tweed GORE-TEX INFINIUM™ Mountain Parka ¥99,000
nanamica MOUNTAIN
TEL:03-6416-3012



D-VEC × ELIMINATOR

プリマロフトジャケット

“それにしてもDAIWAの快進撃が止まらないですね”(武井)

R:こちらもGORE-TEX INFINIUM™を使用した、D-VEC × ELIMINATORによるプリマロフト搭載のジャケットです。保温や透湿機能に加えて、背中にまでポケットがあるなど、収納力も充実しているアウターです。

T:それにしてもDAIWAの快進撃が止まらないですね。もう単なる釣具ブランドのイメージを持っている人は少ないんじゃないですか?

R:DAIWA PIER39の影響は絶大ですね(笑)。ブランディング力がすごいなって思います。若い世代に好きなストリートブランドを聞くと、DAIWA PIER39の名前が上がってくるんで面白いです。ちなみに日本で一番最初にGORE-TEXを使ったのもDAIWAらしいですよ。

T:テックウェアって日本で成熟しましたよね。GORE-TEXとかは海外の生地ですけど、洋服への取り入れ方は日本で浸透していった印象を持っていて。

W:日本のモノづくりにおける、ディテールのこだわり方とハイテクウェアって相性が良いんだと思います。高機能な生地を洋服にどう落とし込むかみたいなのは。

T:このアイテムに関してはELIMINATORの別注だけあって、真っ黒で仕上げてるところがポイントかな。

W:これだけポケットが付いてると、バッグ要らずでかなり実用的なアイテムですね。

快進撃が止まらない、釣具メーカーのDAIWA のアパレルラインのひとつ、D-VECが代官山のセレクトショップELIMINATORとコラボレーション。ブラック系カラーの商品が多いELIMINATORらしく、ソリッドな印象に仕上がった一着。

D-VEC × ELIMINATOR
GORE-TEX INFINIUM™ PRIMALOFT JACKET ¥90,200
ELIMINATOR
TEL:03-3464-8144



genzai

オーバーサイズコート

”たしかに「今っぽい」けど、洋服としてはすごく高度”(武井)

R:先日のRakuten Fashion Week TOKYOでもショーを開催した、genzaiによるデザイン性の高いオーバーサイズなアウターです。

W:genzaiってSNSを上手に使っていて、値段も手が出しやすい。今っぽいブランドですよね。

T:たしかに“今っぽい”ですけど、洋服としてはすごく高度ですよね。

W:普通の洋服ではなくて、グラフィックとかディテールに強い個性が表れてます。

R:後ろのドローストリングを見ると、モッズコート風な作りなのかなと。

T:このオレンジは絶妙な色ですね。

W:ラッパーとかミュージシャンが着てたら似合いそう。若いシーンのトレンドをしっかり掴んでるのが、ブランドが成功している所以なんだろうな。

T:なんとも言えないストリートっぽさが良いですね。

ここ数年で名前を聞くことが多くなったブランド genzai。どこか古着のようなストリート感、そしてクオリティやデザインに対してリーズナブルなプライス感が魅力。このアイテムも絶妙なカラーリングや今を感じるデザインにしてこのプライス。ファンが増えているのも頷ける。

genzai
Escape Coat ¥19,800​​
genzai
https://genzai.online



UNION × KOWGA

ショートジップジャケット

“オーバーサイズが主流なのに、ショート丈っていうのは新鮮”(来田)

R:KOWGAとコラボレーションしたバックプリント入りのジャケットです。UNION が国内のウィメンズブランドと取り組みをするのは初だそうです。

T:KOWGAって元々はウィメンズブランドなんですよね?

R:そうなんです、デザイナーの方も女性で。オーバーサイズがまだまだ主流なのに、ショート丈っていうのは新しいですよね。KOWGAを着ているような感度の高い子たちは、スラっとした洋服を着るんだなって。

W:デザイナー本人もスタイリングが上手だし、リアルな今の東京ストリートな感じだよね。

R:アイテムはロンドン市警のジャケットをベースにしているそうです。サンプリング元もマニアックで面白いですよね!

W:ウィメンズウェアとしてオーバーサイズで着るのもアリかも。

T:なるほど、そう言われると納得かも。

レディースブランドながらメンズ方面からも熱い視線を注がれていたKOWGA。今回のUNION とのコラボレーションでは、ユニセックスで着られるジャケットをリリース。ミリタリーなどの要素を漂わせつつも、東京らしい都会的なイメージの一着に仕上げている。後ろのUNIONのロゴもポイント。

UNION × KOWGA
POLISMAN JACKET ¥46,200
UNION TOKYO
TEL:03-6434-5510



Y-3

adidas ガゼル

“adidasの最新テクノロジーや素材は、Y-3が一番最初に使う印象”(渡邊)

R:adidasの名作ガゼルなんですが、コレは細かいところ含めて全体的にレザーを使ってます。

W:さすがY-3って感じだね。

T:スニーカーにここまでレザーをふんだんに使うのは新鮮かも。しかもサイドに“YOHJI YAMAMOTO”って入るだけで、かなりインパクトがありますね。久しぶりにY-3のアイテムを見たけど大人な感じだな。

W:Y-3って独自の空気感を持っていて、ブランドとしてブレがない。

T:これだけ長いコラボレーションっていうのも珍しいですよね。

W:両ブランドにとって欠かせないパートナーなんだろうな。

T:adidasのクラシックモデルで、こういったラグジュアリーなデザインシリーズがY-3から増えそうな予感。

Y-3 が adidas の名品のひとつ、GAZZELEをクリーンで高級感のあるシューズにアップデート。ソールのサイドテープ部分もレザー使いにすることで、定番的スニーカーのイメージをグレードアップ。何よりもサイドに入ったYOHJI YAMAMOTOの文字が実に強い。

Y-3
GAZELE  ¥41,800
adidas fashion group showroom
TEL:03-5547-6501



(左から) 渡邊敦男(『PRODISM』編集長)、スタイリスト 来田拓也、武井幸久(HONEYEE.COM)



渡邊敦男(『PRODISM』編集長)

1973年生まれ。『Asayan』、『Huge』などの編集を経てフリーランスに転身。2013年にプロダクトにフォーカスした雑誌『PRODISM』を創刊し、現在も編集長として活動中。メンズファッション、スニーカー、ストリートウェアに通じており、独自の美学を持つ。

スタイリスト 来田拓也

1986年生まれ。甲斐弘之氏に師事し、2012年に独立。メンズファッション誌を中心に活躍。トレンドを敏感に取り入れたプロダクトスタイリングにも定評がある。現在アシスタント募集中。

武井幸久(HONEYEE.COM)

1972年生まれ。雑誌『EYESCREAM』の編集者を経てHONEYEE.COMの編集長に就任しつつ1年で退任。フリーの編集者、クリエイティブディレクターとしてブランドサイトやメディアの立ち上げに携わり、2021年秋にHONEYEE.COM編集長に出戻り就任。