HONEYEE.COM的個性派シティガイド
File 008 : TEA BUCKS （東京都・恵比寿 / 代官山）
スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を毎週紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 008は、本格的な日本茶を厳選し、新しい解釈でその魅力を伝える東京・恵比寿 / 代官山のTEA BUCKS。
Text Yukihisa Takei
Photo Li Bowen
バックパッカー、日本茶の魅力に目覚める
先日、とある商品のポップアップイベントにお邪魔すると、普段はコーヒーなどが振る舞われることが多い中、そこでは珍しく日本茶がケータリングされていた。そのお茶をサーブしている人の風貌（カジュアルな服装で、首までタトゥーが入っている）と、いただいたお茶と茶菓子のレベルの高さのギャップに俄然興味が掻き立てられた。
その人物は代官山駅や恵比寿駅から少し離れた場所に日本茶専門店の「TEA BUCKS」を構える大場正樹さん。大場さんはバックパッカーとして世界を旅する中で、自分が見過ごしていた日本、そしてお茶の魅力に気づき始めたという。
「世界を歩いていて、改めて日本の良さに気づいたんです。飲食店に入れば無料でおしぼりもお茶も出てくる。普通と思っていたことが海外では当たり前じゃないことに気がついて、徐々に何か日本の文化に関わる仕事をしたいと思うようになりました」
大場さんは日本に帰国した際、何気なく飲んだお茶の味になぜか感動を覚えたという。
「美味しく感じただけじゃなくて、『お茶って面白い』と思ったんです。そこから勉強を始めようと考え、佐賀県のお茶の産地・嬉野のお茶の農園に修行に行きました。その後、熊本、埼玉、静岡、京都などのお茶農家さんでも視察や修行をさせてもらいました。それぞれ話を聞いて分かったのは、お茶農園が大変な危機にあるということ、そして皆さん命懸けでお茶を作っているということ。なんて尊いものを飲んでいるんだと思いました」
お茶は“お金を払って飲む価値のあるもの”
当初大場さんは、お茶の修行をしたら海外でお茶を広める起業をしたいと考えていたそうですが、2018年に縁あってパックパッカー時代に知り合った美容師の人が開業した恵比寿のビルの1Fに出店することに。「TEA BUCKS」という店名は、有名なコーヒーチェーン店から来ているのかと思いきや、そこには深い理由が。
「キャッチーさは狙った部分はありますが、BUCKSってアメリカだと“お金”の意味なんです。“お茶はお金を払って飲む価値があるものなんだ”という気持ちを込めました」
「TEA BUCKS」では、大場さんやスタッフが実際に農園の現地で畑の状態を視察し、作り手の人と深く交流を結んだお茶だけを取り扱う。
「美味しいお茶にはいくつか要素があって、旨味、渋味、酸味などがあるのですが、僕はそこに作り手さんの“人間味”も重視しています。あとお茶が面白いのは、“４つの数字”をコントロールすることによって味に大きな変化があることです。1.茶葉のグラム、2.お湯の量、3.お湯の温度、そして4.抽出の時間をコントロールすることで、同じお茶でもまったく違うテイストになるんですよ。お客様にはその時のシチュエーションや気分でお茶の味の違いを楽しんでいただきたいなと思っています」
ちなみに「TEA BUCKS」では、グッズやお土産のデザインにも工夫が。まるでウィードに見立てたような茶葉の写真をプリントしたTシャツやスウェット、ティーバッグはお茶を飲むシチュエーションをイラスト化（怒っているとき、音楽を聴いている時、ウ●コをした後…etc）したパッケージで販売し、水出しで濃い目に抽出したお茶を滋養強壮ドリンクのようなボトルに詰めて販売するなど、お茶ビギナーにもその魅力を伝えるユニークなアイデアを取り入れている。
「もし今の時代に千利休がいたら、クリエイターとしてもっとイカれたことをやっていたと思うんです。ふざけたように見えるかもしれませんが、まさに“命をかけて”お茶を作っている生産者の方のために、僕らも命懸けで考えながらお茶を届けていきたいと思っています」
見た目以上に極めて真面目にお茶に取り組む「TEA BUCKS」。こだわりの詰まったお茶菓子や、店頭で作っているおにぎりなども楽しめるので、ぜひ恵比寿/代官山エリアの目的地に。
DESTINATION STORES | File 008
ティーバックス | TEA BUCKS
東京都渋谷区恵比寿西2-12-14
営業時間 : 11:00〜23:00（日曜定休）