BUYERS' RECOMMEND|Vol.6
2023.01.11

あのバイヤーが推す最旬アイテム
Vol.6:BIOTOP、Mukta​、SGSC編

ファッション業界の最前線で活躍するバイヤーの目利きに頼って選び抜かれたアイテムを、リアルなコメントと共にHONEYEE.COMが連載形式で紹介しようというこの企画。第6回目は BIOTOP、Mukta​、STEEP GRADE SHARP CURVES から3名の名物バイヤーが登場。




Text Takaaki Miyake


BIOTOP

お店に足を運ぶといつも何かしら手に入れて帰路に着いてしまう。つい物欲をくすぐられる BIOTOP の店内にはトップメゾンや注目ブランドの最新コレクション、ナチュラルコスメや生活雑貨など幅広いアイテムが揃う。その多岐に渡るジャンルのバイイングを担う迫村さんが、毎シーズン自身の理想を追求し続けている永遠の定番アイテムがこちら。

「今回で第8弾になるこだわりの別注ジャックパーセルです。中学時代は校則から真っ白なスニーカーでの登校でしたが、小学生から自分で洋服を選んでいたので、通学シューズも他と違いを出すために JACK PURCELL のホワイトを張り切って履いていた記憶があります。つま先の青髭のスマイル部分が校則違反だと怖い先輩に絡まれたのを憶えています(笑)。

当時はアメリカ製で個体差がある無骨なシルエットが魅力でしたが、廃番になってからは履かない時期もあります。バイヤーになってからConverse社との取り組みで、真っ先に JACK PURCELL の別注をお願いしました。レギュレーション内で当時の僕が記憶する雰囲気に近づけるかがいつも課題です。ギリギリを攻めた仕上がりに毎回満足していますが、次はもっとという欲求も出てきます。

今回はラリーの木型にステッチを配色や同色を使い分け、スエードも履き込んだ時のことを考えて毛足の長いものに変更したりとこだわりが詰まっています」

2015年に第一弾を発売以来、毎シーズン人気な CONVERSE for BIOTOP JACK PURCELL エクスクルーシブモデル。第8弾となる2023年の新作は、70年代に発売されていた JACK PURCELL RALLY をベースに別注。今シーズンは毛足のある“ヘアリースエード”を採用し、同色のサイドステッチなど細部までこだわった BIOTOP らしいモードな仕上がりに。ブラックとチャコールグレーの2色がラインナップし、シューレースはボディと同色のカラーとホワイトが付属。BIOTOP ならではのモード感ある着こなしのハズしにも、アメカジ好きにもきっとハマるはず。

CONVERSE for BIOTOP JACK PURCELL RET SUEDE RALLY / BT ¥17,600
BIOTOP
https://www.biotop.jp/

迫村岳
株式会社ジュン クリエイティブディレクター / 執行役員

BIOTOP、ADAM ET ROPÉ、WILD LIFE TAILORの店舗開発や品揃えなど、ブランド全体のクリエイティブディレクションを手がける。



Mukta

神戸・北野エリアで、国内外の新進気鋭ブランドを中心に、アートブックや器、レコードなどを取り扱う Mukta / Sal。各スタッフの特色を反映し、バイイングやイベント企画は最終的に全員で決定するという同店で、バイヤーを務めるイタイさんの“無茶振り”から生まれた一着とは?

「Mukta / Sal が取り扱う中でも、ほぼ店頭に並ばない特異な立ち位置にあるブランドが LES SIX です。ディレクターの川西遼平(a.k.a.痛風持ちの皮肉屋)氏は、いかに今の時代においてDIY的に面白い事をできるかを至上命題としており、お互いに無理難題を押し付け合う、いわば無茶振りシーソーゲームを数年前から続けています。

今回の企画は昨年12月に急遽動き出しました。川西氏が2017年にニューヨークのミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザインで催された『FASHION AFTER FASHION』へ参加した際の展示にオマージュを捧げ、限られた時間の中で『元々存在するものから何か作れないか』というお題でスタート。

ヴィンテージスーツを用いた無駄を省くアップサイクル性と、シルバー製のボタンを用いてスーツ上下を一着に仕立る無駄なラグジュアリー性。タイトルの“MUDADUKAI”は、この矛盾を皮肉的にももじっていると思います。数十年後にアイテムを見た時に、地域性や時代性、クオリティなど、どれをとっても謎な香りのする一着。『あれ?これよく考えたらやばくない?』と思わせるような、手垢が残った洋服に仕上がったのではないでしょうか。ベースは日本やイタリアのヴィンテージスーツ。インサイドアウト、着物風の前合わせ、オリジナルのシルバーボタン、立体的なキモノスリーブ。5着限定で製作いただきましたが、すでに完売の場合は悪しからず」

元 LANDLORD のクリエイティブディレクターである川西遼平が手がける LES SIX、そして気鋭のショップ Mukta の組み合わせとくれば期待せずにいられない。ヴィンテージのスーツ上下(=洋装)を解体・再構築し、キモノスリーブのノーカラージャケット(=和装)へ昇華したアップサイクルジャケットは、“MUDADUKAI”とだけあって、年末の1ヶ月余りを川西氏に稼働してもらったという贅沢な”無駄遣い”ぶり。オンラインでの取り扱いはないため、気になる方は店頭への問い合わせをお早めに。

LES SIX  / “MUDADUKAI” UPCYCLE JACKET ¥198,000
Mukta / Sal
TEL:078-291-5045

イタイタイコウ
Mukta / Sal バイヤー

1996年生まれ。姉の影響でファッションに興味を持ち、兄の反面教師で不安定な仕事を志す。鷲田 清一の著書を読んだのち、大学を中退。大阪の気鋭セレクトショップで経験を積んだ後、2018年にMuktaの2号店であるSalの立ち上げに参画、入社。バイイング、別注やオリジナル企画、プレス業務に携わる。店頭では情緒不安定な接客が好評を博しているそう。学生時代の専攻はポストモダニズム。趣味はソフトテニスと料理。好きなものはお酒とニット。嫌いなものはブログ執筆と毛玉。



SGSC

連載企画 DESTINATION STORE でも取材した SGSC は、まさに同企画のタイトルを体現したかのようなショップ。この BUYERS’ RECCOMEND では、店主の清家未来さんに“一推し”アイテムを聞いたところ、予想通りニッチでイカしたアイテムのレコメンドが届いた。

「お店を始める前から愛用しているのが福岡発のシューズブランド STOCK NO: です。オリジナルの木型を使用していて、浅草で作られているシューズは足馴染みもとても良く、スニーカーに近い感覚で履くことができます。今回、SGSC として別注させてもらったモデルはローカットのモカシンシューズで、ミドルカットのブーツタイプよりさらに履きやすいモデルとなります。

アッパーには毛足の長いアンゴラベロアを使用することで、見た目のインパクトも良い仕上がりとなりました。また、当店の壁の色であるパープルをステッチカラーとしたことで、少しだけアクセントのあるディテールも出せたので、そういったこだわりもぜひお楽しみください」

モカシンシューズオンリーというストイックなラインナップで、2017年にローンチされたシューズブランドが STOCK NO: だ。そこから現在はシューズの型数も拡充し、アパレルやバッグなど充実のアイテムレンジとなっている。今回登場したのはブランドのルーツであるモカシンシューズのローカットモデル。アッパーの素材でデザイン性をプラスしながらも、落ち着いたカラーリングで上品な仕上がりに。発売は2022年2月上旬とのことなので、今からこのリリースを心待ちにしたい。

STOCK NO: MOCCASIN SHOES for SGSC ¥42,900
SGSC
https://sgsc-abc.com/
https://www.instagram.com/steepgradesharpcurves_store/

清家未来
SGSC店主

BEAMSでバイヤーを務めたのち、独立。独立から5年が経ち、2022年2月に狛江に STEEP GRADE SHARP CURVES をオープン。多摩川が好き。