デスティネーション・ストア | File 014
2023.04.28

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 014 : uRn(東京都・恵比寿)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 014は恵比寿駅から少し離れた路地裏にお店を構える、チャイとお茶の専門店 uRn。

Text Takaaki Miyake

コーヒー以外のカフェのカタチ

平日はオフィス街として、週末には飲食や買い物を楽しむ人で常に賑わう街の恵比寿。本企画とは一見対局にありそうなエリアだが、この場所にもデスティネーション・ストアはしっかりと存在する。カフェと言えばその語源であるコーヒーをイメージするかもしれないが、今回ご紹介する「uRn」ではチャイとお茶を中心にしたメニューが人気を呼ぶ。

そんな同店でディレクターを務める宮田文太郎さんは、ファッション業界で長年にわたりVMDやブランドのディレクション手がけた経歴を持つ。ファッションの枠組みの中では、どうしてもターゲットが限られてしまうため、当時からより多くの人に楽しんでもらえる飲食業に興味を抱いていたという。

「コーヒーが昔からあまり得意ではないのですが、いつかはカフェをオープンしたいと思っていました。そんなある日、サンフランシスコにあるチャイ専門カフェの噂を聞きつけ、実際に足を運ぶと、たくさんの人が楽しんでいて驚きました。『コーヒーが飲めなくてもここにいて良いんだ』という安心感を得られたんです。そこでコーヒー以外を提供するカフェの可能性を模索していたんですが、そのアイデアも数年は単なる空想レベルでした」

日本から遠く離れたサンフランシスコで感じた原体験から「uRn」のストーリーは始まった。そして、その“空想”が一気に動き出したのが2019年。今やオリジナルのチャイやお茶を求めて足を運ぶ人で店内は溢れるが、最初はポップアップやキッチンカーでの出店、そして初の実店舗はわずか1週間の営業で終了するなど苦労続きだった。

ケータリング、キッチンカー、そしてカフェへ

「最初は知り合いのプレスルームやブランドの展示会でケータリングのスタイルからスタートし、目黒にあるお花屋さんでのポップアップ、表参道の屋台村 COMMUNE 2nd でキッチンカーの出店などを2年ほど続けました。そして2021年9月に現在の恵比寿店をオープンしたのですが、チャイとお茶の専門店が受け入れられるか不安で、冒険に近い感覚でした」

「実はその前に軽井沢へも出店したのですが、チーム全員が東京在住だったので現地のオペレーションをするのがが難しく、1週間でクローズ(笑)。ですが今は都内でのチャイの認知度も少しづつ上がってきているのを肌で感じられることも増えてきました」

カラフルな壺から始まった空間作り

「uRn」と言えば店名の由来でもある壺をモチーフにしたロゴも象徴的で、それだけでお店に足を踏み入れてみたくもなるが、このロゴは単に目を引く以上の意味を持つ。

「元々のロゴは、いわゆるシュッとした今っぽい文字だけのデザインでしたが、このお店のオープンが決定してから、ちゃんと意味を持たせようと思い、再デザインすることになりました。当時はパンデミックの影響で人と会うことが激減し、人の手が感じられる温もりや安心感により惹かれるようになっていたので、そんな想いを込めています」

企業やブランドのロゴは通常キーカラーなどを定めるが、「uRn」ではあえてカラフルなデザインにしている。そして意外にもこの完成したロゴを着想源にしたお店作りが始まり、店内は様々な素材や年代、デザイナーのモノを織り交ぜた空間が誕生した。

「例えばキッチンにあるお鍋の底面には、和室の天井の素材を使っています。少し上の年代の方にはどこか懐かしい、若い方には新鮮と思ってもらえるような、流行りの無機質ではなく、誰かが何かを感じられるスペースにしたかったんです」

敷居は低く、クオリティーは高く

独自のレシピで作られるチャイのクオリティーに一切の妥協はないが、一元さんお断り的なスタイルではなく、テイクアウトもできる気軽さがあるのも「uRn」の魅力の一つだ。

「すり潰した新鮮なスパイスを日々店内の鍋で煮出してチャイを作っています。スタッフ全員が同じクオリティで提供できることも大切な点です。またチャイでは珍しい、牛乳以外のオーツやアーモンドのミルクも選べるのも『uRn』の特徴です」

「とにかく来店の敷居は高くしたくありませんでした。この駅から少し離れた場所を選んだのにも理由があります。旅行とかをした時って、不思議と下調べもせずに入ったお店の方が記憶に残るんです。『uRn』も多少お店の場所が分かりにくくても、偶然フラッと立ち寄って楽しんでもらえるお店を目指しています」

最近は自宅でも飲みたいという声から誕生したパウダーのチャイや、オリジナルブレンドのお茶も店頭で販売をしている。また今年の6月末には早くも2店舗目を日本橋のコレド室町3にオープン予定。ますますパワーアップする「uRn」に今後も目が離せない。

DESTINATION STORES | File 014
アーン | uRn

東京都渋谷区恵比寿1-22-23
営業時間 : 9:30〜20:00
TEL:080-9179-8317
https://store.urn-jp.com/
https://www.instagram.com/urn_tokyo/