デスティネーション・ストア | File 023
2023.09.01

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 023 : CAN-PANY(東京都・清澄白河)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 023は清澄白河で清涼飲料の都市型ボトリング工場を展開する「CAN-PANY」をご紹介。

Text Takaaki Miyake

ソバーキュリアスの時代に向けて

千葉県大多喜町の薬草園跡を拠点にする蒸留所の「mitosaya」が、今年5月に都内にノンアルコール飲料​​の製造・充填所をオープンした。「充填する仲間」の意を込めて「CAN-PANY」と名付けられたこのスペースでは、そのシーズンならではの素材を使った炭酸飲料や、オリジナリティー溢れるレシピを元にしたモクテルなどが作られている。

しかし「CAN-PANY」を運営する「mitosaya」は、アルコール類の中でも度数の高い蒸留酒を主に製造することで知られる。たしかに飲酒文化は世界的にも変容しており、最近はあえてお酒を飲まないライフスタイルを意味する“ソバーキュリアス”という言葉もよく聞くようになったが、今回どのような経緯でオープンに至ったのか。オリジナルドリンクのレシピ開発やOEM事業など、「CAN-PANY」でプロジェクトマネージャーとして活躍する佐伯智子さんに話を聞いた。

「まず蒸留酒を作っている会社がノンアルコールを作る理由としては、時代的にも需要が増えつつあるからだと思います。それは数字的にも出ていて、特に若い世代の方は会食などでもその後の作業能率を下げないために、アルコールを飲まれない方が多いみたいです。“時代を見越して”という経営的な面もある一方で、作っている身としては純粋に美味しいドリンクを提供したいという想いがあります。

お酒が飲めないからノンアルコールではなく、選んでお酒を飲まないというオプションがあっても良いと思うんです。お酒を飲まれない方だと、飲食店に行くと大抵がソフトドリンクの選択肢が限られていて、数種類をずっと繰り返すことになってしまいます。そういった方々にも、美味しいドリンクを飲んでほしいという想いを掲げています」

バーで清涼飲料水?

清澄白河駅から徒歩圏に位置する建物内に足を踏み入れると、工場部分とショップ・バー部分の二つに別れたスペースが広がっている。前者は中山英之氏、後者は野本哲平がそれぞれ手がけ、シンプルかつクリアな要素を前面に打ち出した内装は、「CAN-PANY」がこだわる原料や工程など全てに透明性を追求する精神を反映しているような印象を受ける。

3年ほどの構想を経て、元々イベントスペースだった建物から生まれ変わったこの場所には、“ドリンクバー”と名付けられたスペースで提供されるオリジナルドリンクを目的に足を運ぶ人も多いという。

提供されるのは持ち帰り用に販売されている缶や瓶と同じメニューに加え、グラスの状態で提供されるここでしか味わえないコンブチャなども楽しめる。そのメニューも定期的にアップデートされるため、自宅で飲むのとは一味違った「CAN-PANY」を体感できるのも特徴だ。

充填所としての顔

さらにユニークなのがオリジナルドリンクの提供・販売だけでなく、OEM事業も展開している点だ。しかもクライアントは企業やブランドだけでなく、意外にも個人からのオーダーもあると言う。その理由は小ロットからの製造が可能で、実際に1本からでもオリジナルのドリンクを作ることができるからだ。一般的にハードルの高い飲料のロット数をクリアしやすく、このオープンフレンドリーさからも「CAN-PANY」の哲学を感じさせる。

「OEMとしての場合は作りたい飲料メニューを持ち込まれる方や、本当にゼロベースからスタートする方など様々です。皆さんで使っていただける充填所というコンセプトでスタートしたので、ここで充填していただけるだけでも“『CAN-PANY』らしさ”が出るのではと思っています。

例えば漠然と『何か作ってみたい』という方には、まずどんな飲み物を作りたいかのヒアリングから始めます。『何を入れたいか、どんなドリンクが飲みたいか』などお話を伺って、そこから一緒に少しずつイメージを膨らませて最終的な形作りをしていくことも可能です。

オープンしてからまだ4ヶ月ほどですが、こんなにもボトリングしたドリンクを作られたい方がいらっしゃるんだなと、驚きつつも嬉しく思っています。元になるシロップをご自宅で作っていて、いつかレディトゥドリンクの形にしたかった方や、ロット数が大きすぎて一度諦めていた方なども多くいらっしゃいます」

アルコールの垣根を超えて

「CAN-PANY」では今年5月のオープンから、すでに缶で4種、瓶で2種類のドリンクをリリースしている。中にはロースタリー・カフェの「Coffee Wrights」とコラボレーションをした、缶に充填されたコーヒー豆を販売するなど幅広い活動も見られる。そんな「CON-PANY」の今後の展望について佐伯さんは次のように語ってくれた。

「今は大抵の場所でメニューがアルコールかソフトドリンクで分かれているのが一般的です。ところが“ドリンク”という一つのページで良いのではというお客様にもお会いしたことがあります。ただ単にグラスに注がれるだけではない、もう少し独自性のあるメニューが増えていくために、少しでも私たちが貢献できれば嬉しいですね。今後もお酒を飲む方、そうでない方に関係なく、美味しいから選んでもらえるドリンクを作っていきたいです」

DESTINATION STORES | File 23
カンパニー | CAN-PANY
東京都江東区三好2-6-10 1F
営業時間 : 9:00-17:00 / Drink Bar 12:00〜16:00(土・日・月・祝日定休)
https://can-pany.com/