デスティネーション・ストア | File 025
2023.09.29

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 025 : Esmeralda Serviced Department(東京都・富ヶ谷)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 025は代々木公園駅からほど近くにお店を構えながら、少し見つけるのが困難な「Esmeralda Serviced Department」をご紹介。

Text Takaaki Miyake

ウェブメディアの延長線上として

Esmeralda Serviced Department

2017年にオンラインからスタートしたショップ「Esmeralda Serviced Department」は、2022年に富ヶ谷のビルの1階に実店舗としての扉を開いた。店内に足を踏み入れると単に“感度の高い店”だけの印象ではなく、どこかヨーロッパらしい海外の空気やレイドバックな雰囲気を感じさせる。

今回話を聞いた共同運営者の一人である金山木子さんは、学生の頃からファッション誌で編集者やライターとしてファッション業界でのキャリアをスタート。現在はディレクターとして全体のディレクションだけでなく、バイイングや接客など現場の細やかな面までを手がける。

「ファッションで仕事を始めた原点は紙雑誌でのインターンで、その後も別の雑誌で編集者として仕事をするようになると、段々と誌面ではなくウェブのオンラインコンテンツを担当する機会が増えていきました。最初にオンラインストアとして立ち上げたのも、何かウェブで自分の好きなことをやってみようと思い、その延長線上のような感覚でした」

スタートは意外にも写真発表の場

Esmeralda Serviced Department

と言うのも、共同でオーナーを務めるのは Local Artist ​​の名前で活動するファッションフォトグラファーで、ローンチからほどなく「Esmeralda Serviced Department」にジョイン。一緒に運営をするようになってからは、Local Artist が撮るビジュアルを発表するプラットフォームとしての機能も担った。

「最初は趣味のような感じで、収益のことはあまり考えず細々とやっていましたね。なので当時は販売よりも、ビジュアルを通じた表現の場としての活動の方が多かったです。ヘアメイクやブランドをやっている友人たちを巻き込んで、撮影した作品をウェブにアップする。さらに着用しているアイテムが購入できるという感じでした。商品ありきで撮影をするルックブックの考えとは逆のアプローチだったんです」

ウェブやInstagramに投稿されるスタイリングや写真からは「Esmeralda Serviced Department」らしさが存分に垣間見え、スタート時から全てを自分達で手がけてきたからこそ作り出せる、その世界観の所以はそういった“DIY精神”からなのかもしれない。

フィジカルスペースが持つ重要性

Esmeralda Serviced Department

ではクリエイションを発信する場から、現在の“セレクトショップ”としての存在を確立したきっかけとはどこにあるのだろうか?

「実は2019年ごろから展示スペースや新宿の THE FOUR-EYED さんで、度々ポップアップをさせていただく機会がありました。段々と回数を重ねていくにつれて、お客様と対面で接する重要性を感じるようになり、実店舗の計画を真剣に考えるようになっていったんです。ですがそのタイミングでちょうどパンデミックになってしまったので、しばらくは物件探しを水面下で進めるぐらいの状況が続いていました」

世界的にもあらゆる面で通常を取り戻し始めた2022年、ついに晴れてお店を構えた「Esmeralda Serviced Department」だが、金山さんはこの場所を選んだ理由を次のように説明してくれた。

「今の物件でも一度ポップアップをやったことがあって、その頃からエリアも含めてなんとなく気に入っていたんです。渋谷や原宿だと今は場所として普通すぎるように感じてしまって...​​。いらしゃる方の年齢層も割と自分達と近いことが多いのも魅力の一つでした。

実際にオープンをして1年以上が経ちますが、時々展示会やイベントなどを開催しています。そこからコミュニティや繋がりの発生を実感することが多くて、フィジカルの場所を開いた意義を感じています」

奇抜すぎないこだわり

Esmeralda Serviced Department

その店内には卓球台をモチーフにしたテーブルを中央に据え、店内のインテリアからも独特なセンスを感じさせる一方で、一見ベーシックなアイテムが数多く顔を覗かせる。

「すごく派手であったり、エッジの効きすぎたりする洋服の取り扱いは、あまり多くありません。それでも少し捻りのあって、アイデアに富んだアイテムやブランドをセレクトしています。ありきたりかもしれませんが、一番はやっぱり私たちが好きなモノということです。本当に良いと思ったら売上に直結しなくてもバイイングをしています。実店舗をオープン後は洋服の色味や長さなども含めて、ラックに並ぶシーンをより想像しながらアイテムを選ぶことも増えました」

Esmeralda Serviced Department

最近ではヴィンテージとセレクトブランドに加え、作家モノのプロダクトなどもラインナップして、より一層お店としての深みを見せている。

「洋服以外のアイテムは性別や年齢に関係なく手にとっていただけるので、色々な方に楽しんでいただけるかなという想いからです。今後はお店として認知度という意味合いでも発展はさせていきたくも、同時にインディペンデントさもキープしたいので、その辺りのバランス感覚は意識しています」

独特の抜け感が一度行くとクセになってしまう「Esmeralda Serviced Department」。たまには渋谷や原宿などの喧騒から離れて、肩の力を抜いたショッピングを楽しみに足を伸ばしてみては?

DESTINATION STORES | File 25
エスメラルダサービスドデパートメント | Esmeralda Serviced Department
東京都渋谷区富ケ谷1丁目37−2 代々木松久ハイツ 1F
営業時間 : 12:00-19:00(水・木曜日定休)
https://www.esdepartment.com/