デスティネーション・ストア | File 030
2023.12.08

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 030 : EVANS(東京都・白金台)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 030は白金の住宅地へ見事に溶け込む予約制のラグショップ「EVANS」をご紹介。

Text Takaaki Miyake

住宅地の一角に

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一目見ただけで印象に残るカラフルなラグの数々、そしてオリジナルラグの制作ができるというワークショップが話題を呼び、毎週オンラインストアに追加される新作もすぐに完売してしまうほどの人気を誇るラグブランド MIYOSHI RUG。そんな MIYOSHI RUG が初となる直営店「EVANS」をオープンしたと聞きつけ早速足を運んできた。

まず白金台の住宅街というロケーションの意外性もさることながら、店舗の入る建物は日本家屋の一軒家という完全に周囲の風景と馴染んでいるユニークさも見逃せない。外観からは到底想像もできないが、一度その扉を開けると MIYOSHI RUG の色鮮やかなドアマットやスリッパが出迎えてくれる。

まさにそこは“EVANS邸”

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元々の内装を活かしつつリノベーションした店内は居間やキッチンスペースが残り、実際に自宅でラグを敷くシーンをアレコレ思い浮かべながら買い物ができるのも楽しい。

また様々な形やサイズのラグ以外にも、MIYOSHI RUG をより身近に感じられる靴下やマグカップなど、「EVANS」限定のライフスタイルアイテムが揃うのもここを訪れたい理由の一つだ。

そして店名の「EVANS」は、ラグ文化の発展に寄与したアメリカ人女性のキャサリン・エヴァンス・ホワイトナーに由来するといい、もちろん実際にこの建物やブランドと所縁があるわけではないが、そう言われると確かにエヴァンス氏宅に招かれたような印象もどこか受ける。窓から覗く敷地内の日本庭園も実はよく見ると、松の木とサボテンやバナナの木などが同居するし、その和洋折衷な雰囲気はさながら“EVANS邸”と言ったとこだろうか。

逆境をチャンスに

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今回のオープンでさらに人気が高まりそうな MIYOSHI RUG だが、ブランド誕生の背景には業界自体の衰退危機があったという。MIYOSHI RUGが用いるタフティングとは、フックガンと呼ばれる織機を使用した技術で、1点1点を手作業で打ち込むことによって、まるで絵画のようなモチーフや柄の作製を可能にする。ところが現在も生産の拠点を置く徳島県・三好市や県内の他の地にあった数十のタフティング工場は今では3軒までに減少し、同時に人手不足や後進の育成などの課題を抱えていた。

そこでまず若い世代へ興味を持ってもらうことを目的にローンチしたのが、三好敷物によるオリジナルブランドの MIYOSHI RUG だった。ブランドを通してタフティングの魅力と職人という仕事のカッコよさを伝えるため、気鋭のアーティストや WILDSIDE YOHJI YAMAMOTO​​ などのファッションブランドともコラボレーションも行い、感度の高い層から支持を得るだけでなく、実際に県外から徳島の生産拠点へ移り住んだ20代や30代のスタッフも新たに加わった。

ラグ以外の新境地も

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“アートやファッションを通じて伝統技術を守る​​”をコンセプトに掲げる MIYOSHI RUG の世界観を存分に堪能できるショップ「EVANS」では、元々根津のスタジオで開催していたラグ作り体験のワークショップに加え、今後はイベントやポップアップなどの可能性もあるとのことなので楽しみにしたい。

ただ上質なだけではなく、置くことによって家やスペースの印象がガラッと変わる「EVANS」に並ぶラグの数々は、一度手に取ると分かるがその触り心地もクセになり、一枚買うとまた欲しくなってしまいそうだ。

なお来店はアポイント制になっているため、くれぐれも事前の予約を忘れずに。

DESTINATION STORES | File 30
エヴァンス | EVANS
東京都港区白金台1-4-15 手前の建物
営業時間 : 不定期(Instagramにて毎月告知)
https://www.instagram.com/evans_japan/