デスティネーション・ストア | File 032
2024.01.05

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 032 : Hi Bridge Books(東京都・代々木八幡)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 032では代々木八幡エリアで住所非公開にて営業をする本屋「Hi Bridge Books」をご紹介。

Text Takaaki Miyake

Photography by Masato Kawamura

店主はやはり髙橋さん

Hi Bridge Books

つい先日、代々木八幡辺りに住所非公開のアポイント制の本屋がオープンしたという噂を聞き、実際にInstagramのDMからコンタクトを取って向かうことに。もちろん詳細な所在地は明かせないが、住宅地の中にあるため地図を見ながらでも見過ごしてしまいそうなロケーションにある「Hi Bridge Books」のオーナーは、店名の「Hi Bridge」から予想していた通りやはり「髙橋」さんだった。元々はスポーツメーカーやファッションブランドでパタンナーや生産を経験後にニューヨークへ2年間留学し、帰国のタイミングでアートブックなどを取り揃える東京でも随一のブックストア「小宮山書店」で5年間のキャリアを積んだ経歴を持つ。

ブックセレクトは編集作業

Hi Bridge Books

2023年11月末にオープンしたばかりの「Hi Bridge Books」の店内には、日本では未発売の新書のアートブックや雑誌、写真集や古本までジャンルレスなタイトルが棚で分け隔てられることなく同居している。これらは全て髙橋さんが、無限と言えるほどの大量の本という選択肢の中から自らセレクトを行っている。

「新書のセレクトでは雑誌、特にファッション誌になると時代を反映していること、その一冊に対してどういった方々が関わっているのかを意識しています。本のセレクトもある種、売り場を構成するので編集作業と同じような感覚です。

一方で画集やアートブックなどは作家によって時代を超越することもあるし、古めかしくなることもないので、良い作品かつ自身のテイストを考慮して選んでいます」

枠をはみ出すキュレーション

Hi Bridge Books

「物事を決めつけるとその枠で収まってしまうので、セレクトについては基準や決まりごとがないのが良いことだと思っています。その枠をはみ出すようなセレクトが自分の持ち味だと自負しているので、『Hi Bridge Books』ではエロティックやクィアな本もあれば、ストリートなマガジンやジンもあります。

全てに制限がない中で、自分の心が躍る本って必ずあるんですよね。なのでページをめくるだけでワクワクするようなその感覚、そして面白いという感動、ウェブにはないモノとしての充実感はすごく大切にしています。本は大きければ良いわけではないし、小さければ安いわけでもないですしね」

本を通じたコミュニケーションの場に

Hi Bridge Books

書店としてはユニークなアポイント制を設けたのにはもちろん理由があり、足を運んだ人とゆっくり対話をしたいという想いからだ。例えば好きなアーティストやカルチャーを伝えると、そこからオススメの本の提案をしてくれるので、自分では選ぶことはなかった一冊との出会いもあるかもしれない。

最後に髙橋さんにとって“本”とは、どういう存在なのかを次のように語ってくれた。

「本には正解がないところが好きで、そこが面白いフォーマットですよね。AIがいくら進化していると言え、人を感動させられるのは今後も人に手が作りだしたものだけだと思います。機械には結局規格内のものしか作り出せないし、私はそこからはみ出たものに惹かれるんです」

書店のスペースの半分が実はギャラリースペースになっている「Hi Bridge Book」では、今後ブックローンチや展示も予定されているという。密かに自分だけのお気に入りにしておきたいが、仲の良い友人にはつい教えたくなるような書店が新たに誕生した。

DESTINATION STORES | File 32
ハイブリッジブックス | Hi Bridge Books
住所:非公開
営業時間:アポイント制
https://www.instagram.com/hi_bridge_books/